第5回シェイクスピア勉強会『ジュリアス・シーザー』

 

今回取り上げる作品は「ジュリアス・シーザー」です。

タイトルはシーザーですが、主人公はブルータスです。シーザーから寵愛を受けていながらも、このままでは共和制が崩れてしまう。シーザーの野心の下で人々は奴隷になってしまう。シーザーを敬愛しているけれど暗殺の仲間にくわわる。そんなローマに対する愛をベースに、名誉欲、愛国心、友情の葛藤。これが前半部ですね。

 

暗殺が成功するとアントニーが登場し、今度はシーザーの立場から演説をする。民衆たちはアントニーに心を動かされていきます。民衆の力をつかんだほうが権力を握る、というのは今も昔も変わらないですね。

果たしてシーザーは独裁者だったのか、それとも英雄だったのか。またブルータスたちがおこした行動はローマを守るための高貴な行いだったのか、それとも殺人やテロにすぎなかったのか。見る方向がかわれば評価が変わってくる、というのは現在の政治や外交でもたくさんあることですね。

 

さてジュリアス・シーザーですが、(Julius Caesar) 実在したローマの英雄でした。本名はユリウス・カエサル。英語読みするとジュリアス・シーザーとなります。フランスのナポレオン、ギリシアのアレキサンダーと並びヨーロッパの三大英雄と呼ばれています。

政治家、軍人としてだけではなく、文章家としてもすぐれていて、みずからの戦争の体験を描いた「ガリア戦記」という名作を残しています。

イタリアの教科書にはカエサルをたたえた文章が載っているそうです。「指導者に必要なのは次の5つ。①知性②説得力③肉体上の耐久力④自己制御の能力⑤持続する意志。そのすべてを持っていたのはカエサルだけである」

 

名言もたくさん残しています。

「賽は投げられた」

元老院にはむかって属州のガリア・キサルピナを攻めたとき。ルビコン川を渡った時のセリフ。現在ではもう引き返すことのできない一線を越えてしまったときに使われます。

 

「来た、見た、勝った」

ゼラの戦いはたった4時間で勝負がついてしまった。その勝利をローマに報告したときの文言です。

 

そして「ブルータス、お前もか」

この作品に出てきますが、味方だと信じていた人間に裏切られたときに使います。「○○お前もか」現在でもよく使う言い回しですね。

 

人間としても豪快で、私財をばんばん庶民たちに分け与えていたために人気は絶大だった。しかしその金はどこから来るかというと全部借金で、一時はローマの予算の1割を超えるほどの莫大な借金がありました。それでも債権者には尊大な態度をとりましてね「俺が出世しないと借金はかえってこないぞ」と海外への遠征費用とかすべて出させたそうです。

海賊につかまって身代金を要求されたことがありました。20タレント要求したのですが、カエサルは「おれの身代金がそれでは安すぎる。50タレントにしろ」といいまして、そしてお金をばらまいたんでしょうね。海賊たちと仲良くなってしまい、船では酒盛りになりまして、そのせきで「お前たちローマに帰ったら、貼り付けにしてやるからな」と冗談を飛ばしてワーっと盛り上がったのですが、ローマに帰ったら本当にみんな捕まえて貼り付けにしてしまった。

 

シーザーは髪の毛が若いころから薄かったそうです。

後退した生え際を隠すために独特の髪型をしていたそうですが、それがもとになって現代でシーザーカットとよばれるジョージ・クルーニーとかが好んだ短くする髪型の一種ですが、それに発展したとのことです。

 

髪の毛にコンプレックスを持っていたシーザーですが、女性に対してはどうだったのか。

こんなエピソードがありました。カトという敵対する政治家がいまして、お互いにいつか暗殺してやろうと陰謀を張り巡らしていたのですが、とある会議でシーザーの部下がこそこそと手紙を渡しました。シーザーは深刻そうに読んでいた姿をみて、カトは「陰謀の証拠をみつけたり!」と叫びまして「手紙をみせろ」と要求しました。しかし実はそれは愛人からのラブレターで、その相手というのがカトのお姉さんだった。

シーザーはものすごい女たらしでした。シーザーの向かうところには「敵もいなければ処女もいない」と言われて、シーザーの凱旋の時には「妻を隠せ!」と号令がかかったそうです。なんども元老院の1/3が奥さんをシーザーに寝取られてしまったといわれています。

 

シェイクスピアのこの作品に登場するシーンの中には実際にあった、とされるできごともいくつかあります。

シーザーが与えられた月桂樹を返す。自分は権力を握りたいわけではないのだ、と民衆の前でアピールしてその高貴な精神に民衆は喝采した。

それはパフォーマンスで実際は権力が欲しかったんじゃないの、と主張する歴史学者もたくさんいるみたいです。

 

暗殺の時に

奥さんが悪夢を見てシーザーに外出を取りやめるように懇願していったんは取りやめることを決めたこと。

そして占い師が『3月15日に注意せよ』と警告をし、暗殺当日その占い師に会いまして、その場で「なにも起こらなかったではないか」というと「まだ3月15日は終わっておりません」と答えたこと。これは本当にあったといわれています。

 

 

よくも悪くもいろいろ言われているカエサルですけれど、そんなシーザーとその身近にいたブルータスやアントニーの物語を今日一日かけて皆さんは味わっていきたいと思います。