第一回『ハムレット』
講義録
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1、シェイクスピアとその時代 ハムレットとは何か
2、「生きるべきか死ぬべきか」 言葉遊びと翻訳家の戦い 構成について
3、二人の女 オフィーリアとガートルード
4、ハムレットは太っていた? さまざまなハムレット
シェイクスピア勉強会にようこそ
みなさんお早うございます。今日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
本当はもっと来てくれると思っていたんですけどね、残念ながらこれだけしか集まりませんでした。しかしせっかく来てくれたからには大満足して帰っていただこうと私も気合いれていろいろ勉強してきました。2回目3回目と続けていくうちに人が増えて、今日「他の撮影で来られません!」とかぬかしていた奴らが「私も参加させてください」ときても「人がいっぱいなんで」と断ってやろうと思っています。他の撮影に呼ばれたけれどそれを蹴ってシェイクスピアに来ました、というぐらいになってやりたいですね。
まあそれは冗談ですが、私自身は15年ほど前でしょうか、シェイクスピアぐらいは勉強しておかなきゃなと思いたち、今まで小田島雄志さんの訳を中心に、翻訳を全ての作品を二回り、原文では「ロミオとジュリエット」と「ハムレット」を読みました。まあ一冊読むのに半年ぐらいかかって、途中から何が書いてあるのか分からなくなってしまいましたけれど。
シェイクスピアは知れば知るほど面白いし、楽しいし、深いし、それによくわからない。世界中の学者が侃々諤々(かんかんがくがく)やっているわけですから私が分からないのも当然ですけれど。例えば「ハムレット」に関しては世界中で山ほど研究所が出版されていて、そのすべてを読もうと思ったらそれだけで一生が終わってしまうと言われています。
「他の本を読む暇が全くなくなってしまう。『ハムレット』そのものも」
私は先生でも演出家でもなく、あくまでもみなさんと一緒に学ぶ生徒です。みなさんに教えるのではなく、何も知らないところから勉強し、それを多くの人たちの前で発表することが私の訓練です。この会のために何冊も本を読みましたが、シェイクスピアは知れば知るほど分からなくなっていく、というのが本音です。そもそも今すぐわかる必要もなくて私自身は一生付き合っていけたら楽しいのかなと思っています。私一人で読むよりもできるだけたくさんの仲間たちと、それも私とは立場の違う俳優の方々と一緒に勉強することによっていままで見えなかった部分もたくさん見えてくるだろうし、皆さんにとっても得るものが大きいんじゃないかと思ってこの勉強会を立ち上げた次第です。できることならば、何回も続けられるようにしていきたいです。
実は私が第一回の勉強会に「ハムレット」を取り上げた大きな理由は、何度読んでもよく分からなかったんですね。(みなさん本当に「ハムレット」を面白いと思ってます?)これだけ名作の誉れ高い作品ですが、どこが面白いのかよく分からない。ハムレットがクローディアスに復讐するのはともかくとして、一番大切なオフィーリアやその父親ポローニアス、友人のローゼンクランツとギルデンスターンが死ぬのは明らかにハムレットに責任があるのではないか、こいつが諸悪の根源ではないか、ひどいやつだな、全部お前が悪いじゃないか、まるで秋葉原無差別殺人のKみたいにたくさん人を殺して正当化しているだけではないか、などと思っていたんですね。だからこそ自分の知らないことをたくさん知りたい、それで何冊も本を読んで勉強いたしました。
古典はどの作品でも様々な解釈があります。今日もできるだけ断定的ではなく、こういう意見もあります、ああいう意見もあります、と様々な角度から語っていくつもりではありますが、みなさんも私が紹介することが唯一の正解ではなく、こういう考え方もあるのだなとニュートラルにとらえてくれたらいいなと思います。
では初めて会う人もいると思うので自己紹介から始めましょう。