一歩、二歩
作詞・作曲 池田眞也
1
暗い場所でも 怖くなんかないだろう
君のそばに 僕がいつでもいるから
無限の矢印 目の前に 枝分かれしてる
君の選ぶ道 僕も進むよ
どこに続いているのかわからない
二人しかいない 最後まで離れない
君の中に在る宇宙 勇気を持って踏み出そう
誰も来たことのない場所へ
二人だけの世界地図 思いのままに描こう
僕たちは誰よりも 深く理解りあえるさ
2
いつか君が 大人たちに打ちのめされて
夜明けさえ おびえるようになったら
僕のことそっと たずねてほしい
君の近くで 変わらずにいるから
やさしい力が痛みに寄り添う
すべてを忘れる 君は君じゃなくなる
果てしなく広がる大地 勇気を持って踏み出そう
君の歩幅で構わないから
幼いころの輝き すぐに取り戻せる
目指すのさ 君にしかたどり着けない未来
解説
この歌詞は「将棋」を描いたものです。「将棋」に関する直接的な表現はありませんが、将棋を知らない人の心にこそ将棋の素晴らしさを届けたいと思いこの詩を書きました。
説明ががないと何を描いた歌詞がわからない人が多いかもしれません。もちろん聞いたひとがそれぞれ自由に解釈していただいていいのです。将棋に興味がない人の心の奥底にも、作品のメッセージが響いてくれることを願っています。
「一歩、二歩」
正式タイトルは「いっぽにほ」ですが将棋関係者は心の中では「いっぷにふ」と読んでいただいて結構です(笑)。最初は「一歩一歩」というタイトルだったのですが「二歩」(反則負け)という言葉がユーモラスなのでこのタイトルにしました。
暗い場所でも 怖くなんかないだろう
君の横に 僕がいつでもいるから
無限の矢印 目の前に 枝分かれしてる
君の選ぶ道 僕も進むよ
どこに続いているのかわからない
二人しかいない 最後まで離れない
「君」とは将棋を指す子どもたち、そしてその保護者たち。つまりその場に集まってくれた全員のことです。
「僕」は一番では対局者(人間)。二番においては「将棋そのもの」を指しています。
対局者は勝敗を競い合うライバルですが、決して憎みあってはいません。
無数の変化の中でそれぞれ自分で指し手を決断し、対局者はふたりしか知らない将棋の世界へと入っていくのです。
君の中に在る宇宙 勇気を持って踏み出そう
2番の「君の前に広がる大地 勇気を持って踏み出そう」に対応しています。
「宇宙」とは、「人間の脳の中」や「将棋」の世界のことです。
誰も来たことのない場所へ
どんな将棋も必ず「前例のないの局面」へと入っていきます。そこは自分と対局者の二人しか知らない場所なのです。
二人だけの世界地図 思いのままに描こう
うまい下手は関係ありません。指したい手を指し、楽しめればいいのです。
僕たちは誰よりも 深く理解りあえるさ
手を読むとは相手の心の中に深く入っていくことです。読みが勝った方が勝つことになります。より深く相手を理解したものが勝つのです。
将棋に限らずスポーツにも当てはまることですが、勝つても負けてもいい闘いができた後はライバルとは深いところで理解しあえるのです。
子どものころ将棋に夢中になっていたけれど、成長するにつれ将棋から離れてしまう、という人もたくさんいます。そんな人に気が向いた時でいいから再び将棋を指してほしい、というメッセージが込められています。
いつか君が 大人たちに打ちのめされて
夜明けさえ おびえるようになったら
僕のことそっと たずねてほしい
君の近くで 変わらずにいるから
やさしい力が痛みに寄り添う
すべてを忘れる 君は君じゃなくなる
例えばうつ病になり、朝が来ることをおびえながら眠れない夜を毎日過ごしている人。そんな風に心の弱っている人にこそ将棋を指してほしいのです。
右脳も左脳もフル回転し「わからない」にたどり着く将棋を指しているときは、将棋以外のことが頭から消えてしまいます。日常の苦しみをほんの1時間でも忘れることができれば生きることが楽なれると思うのです。
果てしなく広がる大地 勇気を持って踏み出そう
君の歩幅で構わないから
一番の「宇宙」と対応しています。「大地」とは「現実社会」のことです。
将棋を指すことによって、いやなことを一瞬忘れる。失いかけていた希望や生きる力を取り戻すことができたら、再び一歩二歩歩き始めようというメッセージです。
幼いころの輝き すぐに取り戻せる
目指すのさ 君にしかたどり着けない未来
将棋は人生と一緒で同じ記譜は決してないのです。
「君」の未来を歩くことができるのは「君」しかいないのです。